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戦争する理由

――US101大型3発機――


首脳会談

 今週の『ニューズウィーク』誌にちょっといい話があった。「私の助言する相手は元大統領とフロリダ州知事と現大統領――ということは、私って世界を支配しているのかしら」。ジョージ・ブッシュ元大統領夫人の言葉だそうである。

 しかし、その助言が良かったのか悪かったのか、乳離れのできないマザコン大統領は、とうとう世界中を戦争と闘争と紛争と論争の渦の中に巻き込んでしまった。この男ひとりのために多数の人びとが迷惑を通りこして、命を失いはじめたのである。

 戦いの場に送りこまれた米英軍の兵士も、イラクの砂漠で苦戦を強いられている。たまりかねた英国ブレア首相がアメリカへ飛び、米国ブッシュ大統領との間で首脳会談がおこなわれた。しかし、ここで必要なのは味方どうしの慰め合いよりも、敵方との首脳会談ではないのだろうか。

 理由なき戦争に世界中が反対する中、なぜ英国だけが参戦するのか。日本が支持するのは隣の北朝鮮が怖いという情けない事情があるからだが、ブレアが国内の反対を押し切ってまでブッシュに加担する理由は何か。


クイズ「本物は私です」

 その理由はUS101ヘリコプターだという人がいる。EH101といえばご存知の大型3発機のことだが、それを米国向けにつくり変えるのがUS101にほかならない。

 といっても基本的には双方変わるわけではない。このEH101改めUS101をアメリカの軍用機として使ってもらおうというので、アグスタ・ウェストランド社は昨年、ロッキード・マーチン社と組んで「チームUS101」という合同体をつくり上げた。

 US101はEH101を基本とし、アメリカの技術を加え、作戦行動に適した電子システムを搭載して、米軍用機としていっそう適したものに仕立て上げるものである。

 ヘリコプター自体は最新の技術を採り入れ、信頼性も高い。総重量は15トン前後で、兵員30人を搭載する。機外吊下げ能力は5.4トン。最大速度は309km/h、巡航277km/hで、1,380kmの航続性能を持つ。

 航続時間は7時間だが、増加タンクをつけたり、空中給油を受ければ、もっと長くなる。したがって長距離の自力飛行が可能で、2001年末の冬イタリアからカナダまで11,400kmを飛んだこともある。ローター系統には防氷装置がつき、昼夜間の計器飛行が可能。エンジンは3基で1発停止のときの安全性も高い。


本物は?「あいつだ」「あいつだ」「あいつだ」「あいつだ」

 US101の軍用機としての用途は捜索救難、兵員輸送、戦場支援、海上監視、機雷掃海、兵站輸送など。

 国外への進出に際しては、自力展開のほかC-17グローブマスターVに2機ずつ搭載することができる。そのための準備作業は主ローター・ブレードを取り外し、尾部パイロンを自動的に折りたたむなど、2時間ですますことができる。現地に到着したときも、この逆の作業を2時間ですませ、すぐに飛行可能となる。それというのも装備品のチェック・システムが機体に組み込まれているからで、世界中どこへでも容易に輸送できるし、おそらくは最も早く飛行可能となるヘリコプターというのがメーカー側の主張である。

 そして米軍に採用されたときは、米国内で製造することにしている。


都心部上空を飛ぶ警視庁のEH101

 

 こうしたEH101は1998年から実用化された。英国、イタリア、カナダ、デンマークの軍用機として使われ、日本でも警視庁が1機を採用、世界で唯一の民間機として飛んでいるが、アメリカへの売りこみ目標は空軍のコンバット・レスキュー――戦場で撃たれた戦闘機から脱出したパイロットなどの捜索と救助の任務である。

 もう一つはアメリカ大統領専用機。これまで米国政府の高官乗用機はS-61とVH-60――すなわち米海兵隊の運用するシコルスキー機ばかりであった。その牙城に食い込もうというのがUS101の目標で、それにはまず海兵隊に採用してもらわなくてはならない。

 そこでイギリスはイラクで戦っている海兵隊を支援し、緊密な関係を築き上げようとしているのではないのか。ブレア首相の訪米と米英首脳会談では、そこまでの話が出なかったとしても、言わず語らずのうちに暗黙の了解ができたはずというのが、冒頭の無邪気な邪推であった。


米大統領専用機の塗装をしたEH101改めUS101

 その人のいう通りならば、いずれホワイトハウスの芝生で欧州製のヘリコプターが発着し、アメリカの大統領が手を振りながらそれに乗って行く日がくるかもしれない。

 もっとも、それに乗る大統領はブッシュではあるまい。今のような戦況では、とうてい再選はむずかしく、それに引きずられたブレアもおかしくなり、同罪の小泉さんも降板ということになろう。まことにブッシュという男はアカデミー賞の監督も言うとおり、インチキ選挙で当選したインチキ大統領だったが、はた迷惑のかけ方も並大抵ではなく、ついに世界中に及んでしまった。

 念のためにつけ加えるならば、本当は「戦争する理由」なんぞはないのである。

西川  渉、2003.3.28)


悪夢

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