<ヘリコプターの本領>

荒波の台湾沖から吊上げ救助

  

 去る7月9日、中国の漁船が台湾沖で火災を起こし、乗っていた133人中132人が台湾のヘリコプターとはしけに救助された。

 これは台風6号が日本を襲う前のこと。同じ台風が日本では仙台で劇的なヘリコプター救出を演出したが、それより先の台湾では、もっと規模の大きな救出劇となった。

 舞台は台湾南部の高雄沖で、中国人漁師たちの宿泊施設になっていた漁船である。この船が台風のさなかに火災を起こし、エンジンが動かなくなり、強風と波浪にあおられ、乗っていた人びとは火攻め、水攻め、風攻めの三重苦となった。

 そこへ飛来した救難ヘリコプターは、S-70とドーファンUが写真に写っているが、どこの所属か私はよく知らない。S-70は、台湾空軍が17機、海軍が20機を保有している。これらのヘリコプターは、大波に翻弄される漁船の上から1人ずつ、中国人漁師を吊上げてゆく。

 甲板には何十人もの人が鈴なりになって救助を待ち、中にはマストによじ登っているものもある。誰よりも早く、ヘリコプターから降りてくるホイスト・ワイヤをつかまえようというのだろうか。

 救出された人びとは陸地へ運ばれた。遭難者の何人がヘリコプターで助けられたのか、よく分からない。けれども漁船が荒波に翻弄されているような状況では、ほかの手段による救助はきわめて困難だったはず。このあたりの事情は、いずれヘリコプター専門誌が詳しい取材をして書くだろう。

 強風と荒波の中で多数の人を吊上げ救助したパイロットや救助隊員も、当然のことながら、来年のHAIかAHSで表彰されるのではないだろうか。

 (西川渉、2002.7.19) 

【追記(2003.9.10)】

 上に予想したように、台湾空軍の救難チームは去る5月のAHS学術総会で、勇気あるパイロットに与えられるファインバーグ賞を受章した。このときAHS総会で明らかにされたところによると、台湾空軍のS-70スーパー・ブラックホークは4機が出動し、炎上する船から36人の漁師を吊上げ搬送した。

 ほかに30人分の浮きを投下して、海中に跳びこんだ漁師をつかまらせた。遭難者の人数は133人。大半は救助の船に救い上げられたが、1人だけ助からなかったという。

 なおファインバーグ賞は、テスト・パイロットのフレデリック・ファインバーグにちなむもので、過去1年間に危険を冒して最もめざましい働きをしたパイロット(1人または複数)に授与される。

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