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イギリス王室御用達 英ブレア首相が再びブッシュ大統領に書簡を送ったそうである。内容は前回同様、EH101ヘリコプターを宜しくというもの。イラク戦争に際して、英国の協力を強調しながら、次期大統領機として英国製のヘリコプターを考慮してもらいたいという念押しである。
前回の同じような書簡は今年初めに出ており、マリーンワンの栄誉ある注文を取りたいのがウェストランド社の念願にほかならない。英首相は堂々と、この売りこみに加勢しているわけである。
こういう場合、日本の首相ならばどうするだろうか。ブッシュのイラク攻撃に対して、フセインが大量破壊兵器を隠し持っているかどうか、確たる証拠もないまま、さっさと支持を表明した日本である。大統領の乗用車として、世界で最も進んだトヨタのハイブリッド・カーを買って貰いたいくらいのことを要求してもいいのではないか。
今の首相ならばそうするかもしれぬが、役人連中が「とんでもないこと。私企業のためにそんな加担はできない」と押しとどめるに違いない。彼らの公正を装った建前の壁はさぞかし厚いことであろう。
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ところで、イギリスの女王はどんなヘリコプターに乗っているのだろうか。
しばらく前まではウェストランド・ウェセックスが乗用機であった。1969年に製造された2機が1998年までロイヤル・ファミリーをのせて飛んでいた。女王、皇太后、チャールズ皇太子(Prince of Wales)、アンドリュー王子(Duke of York)、アン王女、ダイアナ妃などが乗ったという。
女王が初めてヘリコプターを利用したのは1977年8月だった。1991年と93年の北アイルランド訪問のときも利用したらしい。運航するのは「ザ・クィーンズ・フライト」という独自の部隊だったが、1995年に英空軍の第32飛行中隊に吸収された。
1998年4月には2機のウェセックスが引退し、1機のシコルスキーS-76C+に代わった。同機は英国のシコルスキー代理店、エア・ハンソン社から10年契約でリースしたもので、民間登録がなされている。運航は「ロイヤル・ハウスホールド」という機関がパイロットを雇用しておこなう。最近1年間の飛行時間は459時間であった。
博物館に展示されたウェセックス女王機![]()
ウェセックスは1969年6月から30年近い間に1万回の飛行をした。それ以前はウェストランド・ワールウィンドや小型のドラゴンフライが女王機として使われた。これらの使用機と年代を整理すると以下のとおりとなる。
1954〜1958年:ウェストランドWS-51ドラゴンフライ(1機)
1958〜1969年:ウェストランドWS-55ワールウィンド(2機)
1969〜1998年:ウェストランドWS-58ウェセックス(2機)
1998〜現 在:シコルスキーS-76C+(1機)ともかくも、米大統領のフリートにくらべると、まことに質素である。
博物館に展示された英王室のワールウィンド・ヘリコプター英王室とヘリコプターとの関係は、王族の利用者が単に乗せてもらうというだけではない。自らパイロットとして操縦する人もいる。アンドリュー王子は海軍のヘリコプター・パイロットとして訓練を受け、1982年のフォークランド戦争ではヘリコプターを駆って実戦に参加した。またチャールズ皇太子もヘリコプターと固定翼機の両方について多くの飛行経験をもつ。
さらに「クィーンズ・フライト」の発足した1954年9月、最初のヘリコプターとしてウェストランド・ドラゴンフライが導入されたとき、エリザベス女王の夫君、エディンバラ公(Duke of Edinburgh)は早くも翌年、ヘリコプター・パイロットの資格を取った。昔から馬に乗り、狐を追って野山を駆けまわった先祖伝来の血がヘリコプターの操縦にも適するのだろう。
なお英王室のためには現在、ヘリコプターのほかに固定翼機も用意されている。BAe146四発機が2機とHS125双発ビジネスジェットが5機である。ただし王族が使うのは飛行時間にして全体の2割以下。ほとんどは閣僚と軍の高官が使っている。
WS-51ドラゴンフライそこで話を戻すと、ブレア首相はさかんに米大統領にヘリコプターを売りたがっている。けれども、自国の女王には小さなS-76が1機だけとはどういうことか。もとよりアメリカの大統領とイギリスの女王とでは、同じ元首でも機能や影響力に大きな違いがある。
それにしても、せめてEH101を1機くらいは女王のために買って上げたらどうだろう。女王としては、そんな贅沢は不要と仰有るだろうが、そうすれば「隗より始めよ」で、アメリカに対しても売りやすくなるのではないか。
そういえば昔、20年近く前であったか、イタリア・アグスタ社を訪ねたとき、EH101はまだ開発飛行試験の途上であったが、試験機の操縦席窓枠の下に英王室の紋章が貼ってあった。しばらく前チャールズ皇太子ご来訪の折り、その席にすわって飛んだのだそうである。とすれば、王族の皆さんもEH101については、大いに関心があるとお見受けするのだが。
(西川 渉、2003.6.9)
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