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宮内庁御用達

 

 先般来アメリカの大統領専用ヘリコプターについて、いろいろなニュースが伝えられるので、関心をもって見ていたところ、日本の政府専用ヘリコプターもそろそろ買い替える時期が近づいたという話を聞いた。

 なるほど考えてみれば今の3機の特別機スーパーピューマが飛びはじめたのは、1986年1月だったから早くも17年が経過したことになる。今から機種選定や予算措置などの手続きをはじめても、実際に使うようになる頃には少なくとも20年が過ぎるであろう。

 とすれば、たしかに機種選定を考えはじめてもいいかもしれない。17年前の当時は日本経済がバブルの絶頂期にあり、政府専用機の導入も2機のボーイング747という高価な買い物を含めて、米国や欧州に対するドル減らしの意味が強かった。それに、当時の首相のフランス訪問に際して、手土産代わりに発注書を持っていったなどという軽口もあったくらい、いずれもあっさりと決まったものである。

 今回は、しかし、今のような財政事情では、そうあっさりとはゆくまい。機種だってスーパーピューマの後継機として、さまざまなものが考えられるから、議論百出、担当者は苦労するであろう。


(EC225)

 取り敢えず候補として考えられるのは、スーパーピューマの発達型EC225や、同じ欧州製のEH101がある。また軍用NH90も民間向けの型式証明を取る構想があるらしい。そしてアメリカ製ではS-92が名乗りを上げるにちがいない。

 EH101は開発当事国のイタリアとイギリスのほか、カナダで使われ、日本でも世界で1機しかない民間機を警視庁が使っている。そこへ最近のニュースでは海上自衛隊の掃海・輸送用ヘリコプターとして近く2機が採用になるもようというから、そうなると政府専用機としても有力になる。

 それならばというので、NH90が出てくる可能性もある。民間型NH90の発想はユーロコプター社によるもので、同機の胴体にEC225で開発した新しい装備システムやエンジンを組みこめば、比較的容易に11,000kg級の民間ヘリコプターが誕生するという。

 そしてS-92は日本製の部分も多いことから、これまた有力候補である。


(NH90)

 ところでアメリカの大統領機は、先の本頁にも書いたように、国防省が今年中に見積もり提案を受け、来年夏に決まる予定である。

 5月末にはワシントンでEH101とS-92がデモ飛行をして、激しい競り合いを演じた。EH101は、もし採用になれば全体の7割をアメリカ製にして、名称もUS101に改めるとしている。

 それに対してS-92は、基本となっているH-60ブラックホークが長年の運航実績を持つとともに、H-60自体すでにアメリカ政府の高官輸送機として使われているから、実績という点ではEH101にまさっている。

 それに対してEHインダストリー社は、S-92は部品のほとんどが外国製ではないかと反撃する。皮肉なことにEH101が大半をアメリカ製とするのに対し、S-92は10か国以上の国際共同開発であるだけに、外国製の部分が多いのである。

 特に問題は、水平安定板や尾部ローター支持構造が中国製であること。アメリカでは軍用機器に中国製を使うことは禁じられているから、この部分だけはシコルスキー自らつくるか、他の米国内メーカーに依託しなければならない。

 もとよりシコルスキー社として、そんなことは百も承知でかねてから準備をしていると反駁する。それどころか、S-92が大統領機として採用になれば、搭載量を増やすためにGE CT7エンジンを今の2,520shpから3,069shpに強化し、2007年から実用可能にすると公約している。

 とにかくアメリカの大統領機でも日本の政府専用機でも、採用ということになれば、そのブランドにハクがつく。昔の和菓子にたとえるならば「宮内庁御用達」ということになるから、これからの売りこみ競争は大いに見ものであろう。

(西川 渉、2003.6.5) 


(US101)

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