
<パリ航空ショー>
合戦前夜
7E7いよいよパリ航空ショーの開幕が近づいた。私も出かけるつもりで準備をし、欧州圏内のヘリコプター救急病院をいくつか見学しようとアポイントなども取ってあったが、劇症肺炎SARSの蔓延に嫌気がさして取りやめとした。
もちろん単に病気に感染するのが怖いといった単純な理由だけではない。それもないとはいえぬが、万が一にも感染はあるまいと考える。けれども、先ずドクターに推薦されたマスクを薬局に買いに行っても手に入らなかったのを初めとして、入国審査で体温をはかったり、体調について質問を受けたり、東洋人がそろって食堂などに入ってゆくと保菌者ではないかと白い目で見られたり、あれこれ考えているうちにイヤになったのである。
友人諸君はSARSなどものともせず、大勢が出かけていったようだから、皆さんの無事を祈ると共に、どんな土産話を持ってきてくれるか楽しみに待つことにしよう。
さて、パリ航空ショーとなれば毎回、地元エアバス社とそこへ乗りこんできた米ボーイング社との論争が大きな話題となる。今年はどんな論議になるのか、受注合戦はどうなるのか、興味の持たれるところである。
この両社は、世界に2つしか残らなかった大型旅客機メーカーとして、10年以上にわたって激しい覇権争いを続けてきた。最近では2000年9月、市場の見通しに関する論争の末にエアバス社がA380超巨人機の開発に踏み切った。これに対してボーイング社は2001年3月音速に近い速度性能を持つというソニック・クルーザーの開発を打ち出した。
ところが秋になって9.11同時多発テロが発生、両社ともに大きな痛手をこうむった。これに対してエアバス社は回復が早く、2002年10月には早くもイージージェットからA319について大量120機の注文を獲得した。一方、ボーイング社は本社をシアトルからシカゴに移し、最近は経済効率を追求する250人乗り旅客機7E7の開発構想を進めつつある。
エアバス社は昨年、旅客機についてはボーイング社よりも多くの注文を受けた。今年も1〜5月の受注数は、エアバス機の方がボーイングよりも120機ほど多い。これはボーイング社のめざす方向が旅客機から軍用機へ移りつつあるためと見る向きもある。とりわけボーイング社の関心は無人機にあるようだ。つまり、9.11テロからアフガニスタン攻撃、イラク戦争、SARSという3重苦の航空界にあっては、旅客機よりもはるかに有利な展開が軍用機の方に期待できるからである。
それに、これから欧州通貨ユーロに対してドルが弱くなるとすれば、エアバス社がいかに旅客機の注文獲得に努力しても、そのシェアはせいぜい55%止まりではないかというのである。
おまけにエアバスについては、スキャンダルめいた話まで出てきた。いささか前のことだが、倒産したサベナ航空が1997年11月エアバスA320を17機発注した。ところが、あの発注は不要なもので、高価で無駄な買い物をしたことが倒産のきっかけになった。その陰にはエアバス社の策謀があったのではないかというのである。
この話は今週の英誌「エコノミスト」が、日本のロッキード事件を引き合いに出して、のちに田中首相が逮捕されたことも引用しながら、詳しく書いている。
以上のような問題点が来週のパリでどのように論議され、報じられるのか注目されるところである。
A320なお、ボーイング社は今のところ2003年の民間向け旅客機の引渡し数は280機、2004年は275機という見通しを立てている。これは昨年来の予定と変わらない。対するエアバス社も今年は300機の引渡しという計画を変えてはいない。この通りであれば、エアバス社が初めて生産数または引渡し数においてボーイング社を追い抜くことになる。
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