パリの憂鬱 パリ航空ショーが近づいた。6月15日(日)から1週間と1日、次の日曜日までルブールジェ飛行場で開催される。
今年はライト兄弟の初飛行百年。さぞかし賑やかになると思われるが、一方ではアメリカのイラク攻撃に真っ向反対をとなえたフランスとの間にしこりが残っているのか、米国防省関連の機関、機材、人員の参加が少ないらしい。とりわけ米3軍の高官たちが来ないというから、そうなると世界中のメーカーが意欲をなくし、盛り上がりに欠けるおそれが出てくる。
航空ショーは矢張り、商品陳列の場であり、最大の顧客がアメリカ軍なのである。主催者によると、出展規模は前回の2001年にくらべて5%ほど減るという。
おまけにSARSの世界的な蔓延で、旅行者が減り、不要不急の旅行は取りやめという人が多くなった。そのため世界中の航空ファンを対象とする航空ショーとしては、入場者も減るかもしれない。
問題の東アジア地域からは出展企業がおよそ30社、参会者が2,000人程度というのが主催者の見方である。当然のこと何か制限をするようなことはない。注目されるのは中国のメーカー4社が初めて大がかりな参加をすることで、目下開発中のリージョナル・ジェットARJ21の実物大モックアップを展示する。
これをみんなが近寄って見てくれるかどうか。主催者は医学的な警戒に万全を期するとしている。いつもはテロへの警戒が重大な要件だが、今回は二重の警戒態勢が必要になったわけである。
2001年パリ航空ショー今年の目玉は、何といってもライト兄弟の初飛行から百年の記念展示である。そのため古典機も17機が参加する。そのうち11機が飛行して見せるという。ほとんどがレプリカだが、2機はライト・フライヤーである。ほかにブレリオ]T(1909年飛行)やモラン・ソルニエ(1913年)などがある。
逆に、新しい方では、主催者としてエールフランスにコンコルドの展示を頼んでいるようだが、「ウィ」の返事はまだもらえないらしい。コンコルドは今年秋には引退することになっていて、最後にこれを見たいという人も少なくないであろう。
ショー会場でのボーイング対エアバスの闘いも見ものであろう。とりわけ今回は、エアインディアとエアリンガスをめぐって、両社の受注合戦の結果が発表される予定。エアインディアはボーイング777-200ERかエアバスA340-300か、どちらかを17機発注する。またエアリンガスはA320か737-800を最大30機発注するもよう。さらにCSAチェコ航空もA330にするか767にするか、目下選考中である。
もう一つエアバス社は、軍用輸送機A400Mに関する180機の契約調印式を、ショー会場でおこなうことにしている。契約の相手は欧州連合で、実際に機体を使うのはベルギー、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、スペイン、トルコ、イギリスである。
2001年パリ航空ショーヘリコプターに関しては、スペインがボーイング・アパッチかユーロコプター・タイガーかの選定を発表すると見られる。
一方ベル社は、なぜか参加しないと伝えられる。それに対して、地元のユーロコプター社は大張り切りで、製品の全機を展示するという。
さて小生、前々からパリ・ショー見学を予定していたが、最近のSARS騒ぎでいささか考えこんでいるところである。
余談ながら、SARSとは Severe Acute Respiratory Syndrome の略で、直訳すれば「重症急性呼吸器症候群」となる。それを新聞やテレビは「新型肺炎」と呼んでいるが、如何にもお手軽な命名で、私は気に入らない。何年かたって、これが旧い病気になっても新型肺炎というのだろうか。
それに「新型」という言葉には好意的なニュアンスが含まれるから、病気の名称としてはふさわしくない。中国語では前例がないという意味で「非典」というそうだが、非は否定的な文字であり、なるほどと思わせる。
そこで私は「激症肺炎」という言葉を提案したい。あるいは中国の発生源が猫の肉を食べた人だそうだから、「猫型肺炎」もいいだろうし、いっそ「化け猫症候群」とでもすれば、いつどこで発症するか分からぬような、真に迫る感じが出るかもしれない。
今やSARSでなくても、地球全体が戦争やテロで発熱し、経済不調のために風邪を引き、悪寒にふるえながら咳こんでいるような状態である。せまい飛行機に閉じこめられ、欧州まで危険を冒して行くよりは、家の中に引きこもっていた方がいいか、などと思ったりしている。
(西川 渉、2003.5.21)
![]()
(表紙へ戻る)