<ストレートアップ>

ヘリコプター最近の話題

A109Sグランド

 ファーンボロ航空ショーを契機として、ヘリコプターの新しい話題がいくつか伝えられた。

 ひとつはイタリア・アグスタ社のA109Sグランドの開発である。従来のA109パワーに対してキャビンを広げてエンジン出力を上げ、用途の拡大をはかろうというもの。すでに1年半も前から飛んでいたようだが、内容は従来のA109の主ローターを新しく改良したり、エンジンやトランスミッションを換装したり、改修と試験飛行を少しずつ繰り返しながら今の姿を創り上げてきたもので、どの時点をもって初飛行というべきか分からないという。

 最終的に出来上がった機体は、総重量3,175kgで、最大8人乗り。プラット・アンド・ホイットニー・カナダ社のPW207Cターボシャフト・エンジン2基を装備して、離陸出力735shp×2,最大連続出力625shp×2、2分半の緊急出力815shpを発揮する。こうした強力な出力に加えて、引込み脚を持ち、機体も空力的に洗練されたことから、このヘリコプターは巡航287〜290km/h、最大311km/hという高速飛行が可能。

 上昇率は毎分577m。ホバリング高度限界は地面効果内で4,350m、地面効果外で2,850m、実用上昇限度5,710m、航続距離870km、航続時間4時間半。カーゴフック容量は1,400kg、吊上げホイスト容量272kg。

 用途は、乗客5〜6席のビジネス乗用機を初め、捜索救難、救急、石油開発支援、警察、沿岸警備などが想定されている。 救急機としては、両側のスライディング・ドアが間口1.40mまで大きく開き、ストレッチャーの積み卸しも容易で、ホイスト操作も可能。キャビンは長さ2.3mの余裕があるため、医療機器を装備したうえで、患者2人をのせ、医師やナースが飛行中に介護することもできる。

 原型機は目下2機が試験飛行を進めており、これまでの飛行時間は合わせて200時間。今年中に型式証明を取り、2005年なかばから量産機の引渡しに入る。年間15機ずつの生産をしてゆく計画で、基本価格は470万ドル。

 こうしたA109Sグランドは、今のA109パワーと新しいAB139の中間に位置するものだが、アグスタ社の積極果敢な開発意欲に敬意を表したい。

ベル・テールファン

 アメリカからはベル社の機材について二つのニュースが伝えられた。どちらも今年初めの国際ヘリコプター協会(HAI)の大会で発表された新しい計画の、その後の動きである。

 ひとつは現用モデル427双発機を一回り大きくして、計器飛行を可能にする427i。この開発計画に対しては、わが三井物産エアロスペース社と韓国エアロスペース社が協力することになり、去る5月に覚書調印がなされた。それに対して、このほど米エアメッソード社が15機を発注して、いよいよ本格的な開発作業が進みはじめた。

 427iは今年中に60機を超える受注をめざし、型式証明は2006年末、量産機の引渡し開始は2007年末の予定という。

 なおエアメッソード社は米国最大のヘリコプター救急会社で、427iは現用22機のモデル222の後継機となる。同社の機材は、傘下のマーシーエアとロッキーマウンテン・ヘリコプター社の保有分を合わせて、ヘリコプター139機、固定翼機15機。すべて救急事業に当てている。ほかに救急器具の開発と装着、機体の改修と整備などの事業を展開中。

 ベル社のもう一つのニュースは、直径1mのテールファンをつけた407実験機が7月15日に初飛行した。これはモジュール方式によって簡便かつ迅速な製造工程をめざすMAPL(Modular Affordable Product Line)軽ヘリコプター・シリーズの端緒で、 ほかにも主ローター、トランスミッション、オートパイロット、騒音軽減機構などをモジュール化する。これらを小型単発、小型双発、中型双発などさまざまな軽ヘリコプターに応用しながら相互の共通性をもたせ、生産費の軽減を進めるのがねらい。2008年後半には、先ず現用206B3の後継機として実用化するが、上の427iにも利用する予定。

カナダ海軍S-92を採用

 最近のヘリコプターに関する最も大きなニュースはカナダ海軍がシコルスキーS-92の採用を決めたことであろう。現用シーキングの後継機となるもので、28機が調達される。入札価格は機体部分が13.5億ドル(約1,500億円)で1機あたり53億円。競争相手はEH101とNH90であった。

 ほかに補用部品費と今後20年間の技術支援をするため、約20億ドルの契約が結ばれる。機体の引渡しは2008年に始まり、毎月1機ずつ納入の予定。この毎月の納入期限に対し、シコルスキー社は期限より早ければ1日あたり5万ドルを貰い、遅れたときは1日7万ドルを支払うという条件もつくらしい。

 カナダ向けの同機はCH-148サイクロンと呼ばれ、目下開発中の主ローターと尾部の折りたたみ装置などがつく。軍用機としては対潜水艦作戦、捜索救難、兵員輸送その他広範な用途に使われるため、ソナー、レーダーなどの電子装備、対艦ミサイル、魚雷、機関砲といった火器装備、艦上での発着装置などが取りつけられる。

 なおカナダ政府は1992年、海軍の次期ヘリコプターとしてEH101を選定した。50機を58億ドルで調達する契約を結んだが、政権が変わった1993年に契約破棄となり、5億ドルの違約金を払った経緯がある。そして1998年改めて15機のEH101コーモラントを発注、現に捜索救難機として使用中。

 今回のS-92の発注は、機体価格が如何に安いとはいえ、カナダ軍の使う大型ヘリコプターが2機種に分かれたことになり、不合理ではないかという意見も見られる。しかし3発型のEH101に対して、双発型S-92は当然運航費が安い。しかも世界中で広く使われているH-60の膨大な運用実績に基づき、その発達型として開発されたもので、安全面でも進歩しているというのがカナダ政府の主張である。

 S-92は、軍用機としてはこれが最初の受注だが、民間機としてはこれまで確定27機、仮30機の注文を得ており、最初の機体が去る6月ペトロリアム・ヘリコプター社へ引渡されたばかり。

(西川 渉、『日本航空新聞』紙2004年8月26日付掲載)

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