
<ビジネス航空>
ビジネスジェットで飛ぶ豪華定期便 ![]()
これは特定の企業を宣伝しようというのではない。が、その企業の事業展開ぶりを見ると、ビジネス航空に関して新しい分野を開く一つのヒントになるのではないかと思い、一端をご紹介したい。
企業名はスイスのプライヴェートエア。ジュネーブに本拠を置き、保有機はボーイング757、ボーイング・ビジネスジェット(BBJ)、ガルフストリームW、チャレンジャー604、サイテーション]、リアジェット60、キングエア200など大小さまざまで、総数およそ50機に上る。
事業の一つは空港での拠点事業(FBO:Fixed Base Operation)――その空港へ飛来する他社のビジネス機に対し、主に入国・通関手続、燃料補給、機体整備、機内清掃、ケータリング、ホテル予約、タクシー手配といった世話をする。ほかに乗員の派遣や訓練もおこなう。
第2は中古機の売買。不要になったビジネス機を企業から引き取り、それを次の企業に売り渡すといった仲介である。また、航空機購入のための資金調達についても支援する。
第3はチャーター飛行。上述のように大小さまざまなビジネス機を保有し、顧客の求めに応じて飛行する。顧客は大企業のトップを初め、政治家、映画俳優、ゴルフ・プレイヤー、サッカー選手団などが多い。
そのチャーター運航が発展して、特定企業の社内連絡便として定期運航をするのが第4の事業である。2002年10月からはエアバス社の社内運航をすることになった。これは英、独、仏、スペインなど欧州各地に製造工場を持つエアバス社が、各地の工場間を結ぶ連絡便にプライヴェートエアの飛行機をチャーターしたもの。
使用機はエアバス社自身が製造したA319。内装を普通の旅客機のビジネス・クラスに相当する革張り48席に改め、月曜日から金曜日まで週5日の運航をおこなう。単なる運航委託ではなくて、プライヴェートエアが2機のA319を購入し、エアバス社がチャーターして飛ばすものである。
そして5番目の事業は定期運航。普通のエアラインと異なる特徴は、ビジネス機を使う点にある。ルフトハンザ航空との提携によって2002年6月からはじまった。ボーイング・ビジネスジェット(BBJ)を使用し、ドイツのデュッセルドルフからニューヨークまで飛ぶ。
空港での旅客の乗降はルフトハンザの施設を使うため、外見上は普通の定期便のようだが、機材と乗員はすべてプライヴェートエアのもの。機内はビジネスクラスだけの48席。豪華でゆったりした旅をすることができる。運賃は普通の定期便のビジネスクラスと変わらず、サービスはそれより良くて豪華という。
BBJは元々ボーイング737である。機内をビジネス機として改造し、客席が減った分だけ床下貨物室に燃料タンクを増設、大西洋横断も可能な長航続性能をもたせてある。
こうした小規模・長距離の運航は、一昨年の9.11テロ以来、空港の保安検査がきびしくなって混雑や遅れが増え、旅客が減る傾向にある中で、新たな需要を喚起するものと見られる。空港でのチェックインも通常の半分、1時間以内に完了する。
こうした特徴を生かして、プライヴェートエアはデュッセルドルフと並んで本拠地ジュネーブからもニューヨークへの定期運航を計画している。使用機はやはりBBJで、ケネディ空港へ週6回の往復をする。予備機はボーイング757だが、これも革張り49席の豪華な内装になる。ニューヨークには国連本部があり、ジュネーブにも国連機関が多い。その間を往復する外交関係者や国連職員も少なくないから、航空路線としても有望な市場となろう。
プライヴェートエアはパリ市内のルブールジェ空港にもビジネス航空の拠点を持つ。今のところは、ここから欧州一帯に向かってビジネス機のチャーター運航をしているが、いずれ定期便の開設も考えられる。そして将来はロンドン〜ニューヨーク間のビジネス定期便も視野に入れている。
同じような事業はアメリカ国内でもおこなわれている。シカゴ・ミッドウェイ空港からニューヨーク・ティータボロ空港までビジネスジェットで定期運航をするインディゴである。使用機は4機のダッソー・ファルコン20で2001年8月に開始、今年からはもっと大型のエムブラエル・レガシーに代わった。運賃は片道629ドル。通常のビジネスクラスと変わらない。
レガシーはリージョナル・ジェットERJ-135(37席)をビジネス機に改めたものでイインディゴの機体は16席。これを同社は25機発注し、さらに50機を仮発注している。これでシカゴ〜ニューヨーク間に1日4往復のデラックス便を運航しているが、今後さらに他の都市へも定期路線を拡大していく計画である。
こうして見てくると、ビジネス航空といっても特定企業の社用機や自家用機に限られるものではない。近年はフラクショナル・オーナーシップ事業が盛んになり、高価なビジネス機を分割所有することによって、中小企業でも自家用ビジネス機が使えるようになった。
これでビジネス航空は一段の飛躍を遂げたが、ビジネス機による豪華定期運航はさらに新たな分野を開くものとなるであろう。
(西川 渉、『日本航空新聞』2003年2月5日付け掲載)
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