<HAIの運航実態調査>

ヘリコプター事業の内外比較

 

 国際ヘリコプター協会(HAI)は今年2月のヘリエキスポで、昨年5月の運航者実態調査の結果を公表した。同協会に加盟する世界2,300の企業および団体に質問状を出し、ヘリコプター事業会社のほか、警察、消防、病院などの公的機関、自家用機を保有する新聞、テレビ、一般企業などから221通の回答が寄せられた。

 回答率は1割に満たないが、これらの企業または団体が運航するヘリコプターは1,945機、飛行時間は110万時間に上る。また179通が米国内から、130通が事業会社からであった。

 報告書はA4版80頁余りになるが、その中から事業会社の回答に絞って筆者なりに整理し、日本との比較を試みたのが下の表である。

 なお、日本側の数字は本紙『日本航空新聞』2002年6月6日付の調査結果に全日本航空事業連合会の集計を加味したもの。いずれも2001年度末の実績で、HAI調査が2001年の実績を対象としている点にほぼ対応する。

 さて、企業形態は面白いことに、日本のヘリコプター企業37社もHAI調査の130社も平均的な姿はほとんど変わらない。日本の方がわずかに機数が多く、従業員数が少ないことから、形態としては効率的といえるかもしれない。

 ところが運航実績となると、日本が一挙に悪くなり、ヘリコプター1機あたりではHAI調査の3分の1強しか飛んでいない。1人あたりの飛行時間も非常に少ない。

 何故そんなことになるのか。事業の形態を見ると、日本は最も多い物資輸送でも収入総額の15%を占めるにすぎない。かつては20年以上にわたって25%から30%近くを占め、1996〜97年には3分の1に達した。それが2000〜01年に急減したのである。

 薬剤散布も1980年代なかばには収入の30%に達したが、90年代に入って徐々に減ってきた。この二つの事業は1980年代には合わせて55%前後、ときには6割を超える2大事業として、わが国のヘリコプター事業の基盤を成していた。しかし90年代に入って40%台に落ち、2001年は3割を切って26%まで落ちこんだ。

 それに対して、HAI調査の収入源は海底油田やガス田の開発支援が収入の半分以上を占める。これが昔からの国際的なヘリコプター事業の基盤であった。加えて最近はヘリコプター救急が伸びてきた。双方合わせて、固定的、安定的な仕事が収入の7割以上に達するのである。

 こうした活動により、2001年度のわが国ヘリコプター業界は総額407億円の売上げとなった。その結果、1機あたりの売上げは8,390万円で、1ドル120円とすれば70万ドルに相当し、HAI調査の結果をやや上回る。1人あたりの売上高は1,782万円で、148,500ドルに相当し、HAI調査をやや下回る。いずれにせよ余り変わらないが、飛行1時間あたりの単価は40万円だから、3,380ドルに相当し、なんとHAI調査の2.5倍に当たる。

 上に見たように、飛行時間が少ないにもかかわらず売上げ高が同程度だから、単価が高くなるのは当然であろう。こうした現象を見て、ある外国人は「日本は商売がうまい」と言ったが、果たして喜んでいいのかどうか。販売単価が高ければ売れ行きは伸び悩むし、売れ行きが伸びなければ単価は高くならざるを得ない。ますます売れなくなって悪循環に陥る可能性があるし、少なくとも市場の拡大は望めないであろう。

 とりわけ上述のように、かつての基盤事業であった物資輸送や薬剤散布が減ってきた現在、それに代わる基盤を固めなければならない。といって、わが国周辺の大陸棚には1980年代さかんにおこなわれた石油探査の結果、経済的な埋蔵量は見当たらない。とすれば、次はヘリコプター救急ということかもしれぬが、欧米のようなところまで普及発展するには、まだまだ時間がかかりそうである。

 以上のような事業結果から、経常利益が黒になった企業は、日本が55%、HAI調査が66%であった。内外ともにヘリコプター業界は困難にぶつかっているかに見える。

 その困難とは何か。HAI調査ではヘリコプター事業を阻害する要因として次のような課題を抽出している。発展性に欠ける市場(27%)、法的な規制(21%)、財務的な弱さ(14%)、ヘリポート、航空路、空港乗り入れなどのインフラ不足(11%)、環境問題(9%)、パイロットや技術者などの人材不足(7%)である。

 わが国の阻害要因は読者の皆さんに考えていただくとして、ヘリコプター事業の発展のためには新たな分野の開拓こそ最大の突破口であることは間違いない。国内ばかりでなく、国外も含めて開拓の努力を惜しんではならないであろう。

西川 渉、『日本航空新聞』2003年5月22日付掲載)

表紙へ戻る


 


[PR]看護師の好条件求人なら:転職のプロがサポート!年間5万人が利用