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<ヘリ・エキスポ2003>

20年後のニュースと広告

 

 今回のヘリエキスポで、私の最も気に入った展示の一つは、英ヘリデータ社のものであった。同社は2週間ごとにヘリコプター関連ニュースと中古機や求人広告など、A4版16頁の通信紙「ヘリデータ」を出しているイギリスの出版社である。

 会場で配っていた最新の通信は「へり・エキスポ特集」として、たとえば次のようなニュースが掲載されていた。

 世界的な経済不況の中でドルが強くなったことから、米ヘリコプター・メーカーの2002年引渡し実績は全般的に低下した。ロビンソン・ヘリコプターですら、2001年に320機を超えた引渡し数が255機に減った。

 ベル社も、民間機の受注数は2001年の122機に対して25%ほど減ったと見られる。引渡し数も、最終的な数字は未確認だが、モデル430は2倍ほどになったものの、407は30機前後で前年なみで、他は減ったもようである。

 MDヘリコプター社の2002年受注数はわずか15機まで下落した。シコルスキー社は2001年のS-76C+の引渡し数が10機だったが、2002年はかろうじて13機となった。

 ブラントリーB2Bは、引渡し数が2機だった。前年はゼロである。逆にカマン社は前年の3機が2002はゼロになった。

 アグスタ・ウェストランド社はイタリアで、ポルトガル空軍向け12機のEH-101の最終組立てを開始した。カナダ空軍向け15機のEH-101コーモラント捜索救難機の引渡しが終わったところで、それに代わる新しい捜索救難機の作業がはじまったわけである。

 一方、同じ合弁会社のイギリス側ヨービル工場では、デンマーク空軍向け14機のEH-101が、この2月から最終組立てに入る。これらの機体は現用S-61に代わって捜索救難および戦術輸送に使われる予定。

 ほかにも沢山のニュースが掲載されているがキリがない。また中古機の広告も多く、友人のロイド君がやっているロイド・ヘリコプター社もAS355、AS350、ベル206Lなどの仲介広告を出している。

 それによると1995年製AS355N(TT584時間)はVVIP内装、革張りインテリア、外部塗装一新、気象レーダー装備、計器飛行も可能。米国籍で事故歴なし。1989年製のAS350BA(TT1,582時間)はVVIP内装に仕立て直し、M/RおよびT/Rブレード新品、英国籍。値段は両機とも電話で交渉するらしい。

 また2機の206Lは1982年製が580,000ドル、89年製が597,500ドルと値段が表示されている。

 そして実物の写真と仕様詳細はウェブサイト(http://www.lloydhelicopters.com/)へとなっている。なお、TT(トータル・タイム)が機体製造後の総飛行時間であることは断るまでもない。

 さて、私の気に入ったのはブースに飾ってあった20年後の「ヘリデータ」紙を想定したパネルである。2023年7月25日付けとなっていて、たとえば次のようなニュースが掲載されている。


今の「ヘリデータ」(左)と20年後の「ヘリデータ」(右)のニュース頁

「ユーロコプター社はマリニアンヌ工場で、30人乗りの新しいティルトローター機の飛行試験を開始した。シコルスキー社との共同開発になるもので、58分間の飛行は『平穏無事だった』とユーロコプター社は語った。この新しい航空機はECS-1000と名づけられた民間向けのティルトローター機である。ベル・アグスタ社が開発中の25人乗り『イーグル』ティルトローター機に対抗するものだが、イーグルは来年にも型式証明を取る予定」

「オフショア・ロジスティック社は、シベリアの石油開発支援について10年契約を獲得した。これは米露共同の油田開発で、使用機はミルMi-38が3機とMi-26が2機だが、3〜4年後にはMi-38の代わりにティルトローターを使用する予定」

「米陸軍はボーイング・アパッチ・ロングボウU攻撃ヘリコプターを退役させることにした。同機に関しては最近、乗員の間から技術的に旧くて使えないという苦情が上がっていた。パイロットたちによれば、アパッチは未だに機銃やミサイルが主力火器となっていて、敵のレーザー光線装備の戦車や航空機に対抗できないという。これで不要になる多数のアパッチは、アメリカ森林局に払い下げて山火事の消火に役立てて貰うことにしている」

「カナダ海軍のパイロットは、今後なお2025年まで現用CH-124Aシーキングを飛ばさなければならない。後継機の選定について政府の決定がさらに先延ばしとなったためである」

「ロンドン〜パリ間に新しいコンパウンド・ヘリコプターによる旅客輸送がはじまった。スーパーロートダイン(旅客50人乗り)を運航するのは欧州国際ヘリコプター社(EIH)。運賃は片道120ユーロ、往復200ユーロである。スーパーロートダインは1950年代の英国で試作されたロートダインの技術を基本とするもので、420km/hの速度性能をもち、1時間以内の都市間通勤路線に使うことができる。EIHでは現在6機を運航しており、2021年以来ロンドンからマンチェスター、バーミンガム、カーディフへの路線を開設してきた。新しいロンドン〜パリ線は将来ブリュッセルまで伸ばす計画」

 こうした未来のニュースに加えて、もう一つのパネルにはヘリコプターの広告が出ている。


今の「ヘリデータ」(左)と20年後の「ヘリデータ」(右)の広告頁

「最新鋭機ロビンソンR88――ただいま売り出し中」とか「ティルトローター新製機と中古機――在庫あり。詳しくは電話+007-89238-94782へ」など。

 また20年後だからAH-64DやBA609も中古機になっている。その広告は「アパッチAH-64D(製造番号7652)――機外吊下げ輸送承認ずみ。木材搬出、山林消火に使用可」とか「BA609(総飛行1,580時間)――VIP仕様、外部塗装と内装一新、完全ビジネス機、事故歴なし……価格は電話にて」

「シコルスキーS-92(総飛行時間5,570時間)――主ローターと尾部ローターのブレード新品。内装革張り、要求によって塗装直し……価格は電話にて」

「ロビンソンR44レイバンV――事故歴なし。夜間キットとカラー・スカイマップV装備、旅客輸送仕様、ツートーン・カラーのメタリック塗装、状態良好……価格205,000ポンド。電話+002-463528-894578」

「ボーイング・チヌーク(元米国籍)3機在庫、VIP輸送かシャトル・サービスに適。AB139(TT2,100時間)――訓練利用なし、常時屋内格納。EC725(2004年型)――飛行時間多し」

「グローバル・ヘリエア・サービス。部品取り用アグスタ119コアラ――エンジンとガラスなし。EC120B――全部品そろい。シコルスキーS-76G(機体TT5,300時間)――自家用機。電話+001-3657-92145580」

「ベルJRX-W(TT375時間)――グレー革張り内装、ブレード新品、最新アビオニクス装備(UPSユニバーサル・ポジショニング・システム)、状態良好、リースバック可能。詳細は電話-22-465-8880156へ」

 2023年には、S-76がG型まで進み、ベル社が昨年発表したジェットレンジャーの発達型JRXもW型まで登場するらしい。そしてGPSはUPSに進化するのである。

 このようなパネルの紙面には、発行人や編集者の名前も書いてあった。これはどういう人たちかと訊くと現在のスタッフだという。「それならば、皆さんの子どもたちの名前にすればよかった」と言うと、「オー、グッド・アイディア! 来年はそうしよう」というのが先方の反応だった。

 その言葉を、イギリス人が来年まで憶えているかどうかは知らない。

(西川渉、2003.3.2)

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