
<ヘリ・エキスポ2003>
EC130とオクラホマ救急 ![]()
ユーロコプターEC130ヘリコプターが初めて公開されたのは2年前のヘリ・エキスポ2001であった。これが最近、思いのほかによく売れているらしい。今回のヘリ・エキスポ会場でも3機の受注が発表された。ラスベガスのマーベリック・ヘリコプター社へ2機、マウイのサンシャイン・ヘリコプター社へ1機である。
EC130は騒音が静かで、幅の広いキャビンをもち、機内は6〜8人乗りという単発機である。
AS350の発達型とはいえ、最新の技術を数多く採り入れている。主ローターは新しくて騒音が少なく、旅客にとっては視界が広く、ヘリコプター会社にとっては客席数を7席まで取れるのでコストが安くなり、遊覧飛行に適する。
たとえばブルーハワイアン航空は本機を10機発注しており、遊覧に使いはじめてからわずか1年で、複数機による飛行が総計2,000時間に達した。この間、機材上の不具合はなく、信頼性の高いヘリコプターということができよう。同社は最近までに6機を受領している。またニューヨークでもリバティ・ヘリコプター社が3機を使って遊覧飛行をしている。
EC130は、警察機や救急機としても注目されている。警察ではこれまでAS350が使われてきたが、EC130はその後継機となり得る。搭載スペースも広くなり、警察業務のためにいっそう使いやすくなった。また騒音が少ないために、同じ場所で低空・低速飛行を続けるといったことも、付近の住民に余り気をつかわなくてすむようになった。最近はカリフォルニア州ロングビーチ警察から2機を受注している。
救急飛行専門のロッキーマウンテン・ヘリコプター社は、やはり10機のEC130を救急用に発注しており、その中の1機をここヘリ・エキスポ会場に展示している。救急機だからといって双発機でなければならないとは限らない。この展示機はオクラホマ大学医療センターに本拠を置くヘリコプター救急プログラムのEC130である。
これからは社用ビジネス機や旅客輸送にも使われるであろう。さらに軍用分野では、旧いアルーエトVの代替機としてスカウト機に使えるだろう。アルートVは世界中でまだ700機ほど飛んでいる。
ユーロコプター社は2001年10機のEC130を引渡した。昨2002年は30機だった。それが今年は大きく増えようとしている。
EC130がよく売れている理由のひとつとして、ユーロコプター社は160万ドルという値段が適切だったからと考えている。もうひとつは新しくてしかも実証ずみの技術をふんだんに採用したことで、1994年以降のAS350B3、EC120B,EC135などの開発実績から得られた9項目の新技術を採り入れている。
第3はサービス・サポート・ネットワークを徹底的に見直したこと。ユーロコプター社は今、世界各地に次々とサービス施設を拡充しており、最近はチリとマレーシアに新しい拠点を設けた。
改めてEC130を見てみると、同機はAS350エキュレイユ/アスター・ファミリーの最新型、もしくは発達型というべき機体である。スターフレックス構造の主ローター、主ギアボックス、そしてターボメカ・アリエル2Bエンジン(847shp)などはAS350B3と同じものを使用している。
しかし尾部ローターはフェネストロンに変わり、キャビンはワイドボディになって、AS350にくらべると幅が1.87mから2.03mへ広がり、容積は23%ほど大きくなった。これで客席が増えたばかりでなく、大きなキャノピーで乗客の視界が広がった。
またアメリカのグランド・キャニオンなど国立公園の騒音基準にも適合する静かさをそなえている。ユーロコプター社は、これを世界で最も静かなヘリコプターのひとつとしている。騒音値はEPNdBが84.3デシベルで、ICAOの制限値より7デシベル少なく、米国立公園の基準を0.5デシベル下回る。
ローター速度は自動的に制御され、飛行状態に合わせて、最適のエンジン出力が得られる仕組みである。したがって巡航中の騒音は最も小さくなる。エンジン・コントロールは完全ディジタルのFADECでおこなう。
油圧系統は2重になった。したがって油圧故障にそなえる操縦訓練の必要がない。
こうしたEC130は2000年12月にJAAとFAAの型式証明を取得、2001年6月から量産機の引渡しがはじまった。最近までに50機以上が引渡されている。
さて、ヘリエキスポの会場に展示されたのは、オクラホマ大学医療センター(OU MEDICAL CENTER)のメディフライトに引渡される機体であった。EC130が救急飛行に使われるのはこれが初めてだが、メディフライトは同機を2機導入する。
この2機はロッキーマウンテン・ヘリコプター社からチャーターするもので、同社はEC130を10機発注している。
メディフライトはこれまでベル206Lロングレンジャーを使ってきた。これがEC130になれば、キャビンは大きくて使い勝手が良く、速度は25%増で、航続距離も伸びる。したがってオクラホマ州のどこからでも救急患者を容易に、迅速に、安全にOU医療センターへ搬送することが可能となる。
OU医療センターはオクラホマ州唯一の高度救命救急センターだが、病院では新しいヘリコプターの導入によって救命率が上がるものと期待している。
OU医療センターは一般的な救急ばかりでなく、小児救急に関しても州内随一の高度な医療が可能であり、EC130の広いキャビンは保育器などの搭載を容易にすることができる。
また医療チームの多数の人びとが、ヘリコプターの周囲で重たいストレッチャーや保育器の積み卸しをする際、尾部のフェネストロンは普通の尾部ローターのような危険がなく、静かでもある。
さらに、このヘリコプターは視界が広いので、救急現場への着陸に際しても、障害物があれば容易に見つけることができよう。
メディフライトは1977年小児救急を対象として固定翼機を使いはじめ、1980年10月からヘリコプターの運航を開始した。これまでの患者搬送数は3万人以上。最近はヘリコプターで年間1,200回の出動をしている。
メディフライトの発端は小児救急だったが、今でも幼い患者の救命には積極的に取り組んでおり、最近10年間の実績は未熟児の搬送がおよそ2,300人、小児患者2,200人以上である。ほかにヘリコプターを使わず、救急車で搬送した小児救急患者が3,700人に上る。
OU医療センターはオクラホマ市内にあり、大学病院を背景として世界最高水準の医療をおこなっている。患者は未熟児や小児はもとより、高齢者の医療まであらゆる年齢層を対象としている。
オクラホマといえば1995年4月19日の連邦ビル爆破事件が想起される。これは同日朝、連邦政府の役所が入っているアルフレッド・ミューラービルが爆破され、168人の犠牲者を出したテロ事件である。
米政府に敵意を抱くテロリストが、連邦政府ビルの前で、4800ポンドの爆薬を満載したトラックを爆発させたもので、犠牲者の中には託児所にいた子どもたちも含まれる。
このときメディフライトは多数の救急車に加えて3機の航空機と医療チーム4組を投入して現場治療に当たった。コミュニケーション・センターも現場と周辺各地の病院との間の連絡調整にあたり、OU医療センターが普段から実行してきた救急機能を充分に発揮した。その功によって、メディフライトは同年の航空医療クルー賞を受けている。
連邦ビルの爆破現場に駆けつける女性ばかりの医療ティーム
当然のことながら、人びとが逃げるのとは反対方向へ走るのださらに1999年5月3日、オクラホマ市が100年に一度という巨大竜巻に襲われ、倒壊家屋約1万戸、死者44名という被害を出したときも、メディフライトは2組の医療チームとヘリコプターを被災地へ送りこみ、現場救急に当たった。
この竜巻(トルネード)は最大風速が毎時318マイル(毎秒142m)を記録、4時間にわたって地上を駆け巡り、これまで記録された中で最も破壊的であったという。
メディフライトは1日24時間、1年365日、1刻の休みもなく、緊急事態に陥った患者さんのために待機をつづけている。
(西川渉、2003.2.26)
ロングビーチ上空のEC130(写真:ユーロコプター社提供)
本機の技術データはユーロコプター社のサイトに詳しい。
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