<ヘリ・エキスポ2003>
AB139の飛行を見る この6日間、テキサス州ダラスで開催されたHAI(国際ヘリコプター協会)の年次大会「ヘリ・エキスポ2003」に出かけておりました。留守中は当然のことながら本頁の更新ができませんでした。そのため弘前大学医学部の滝口雅博先生からどうしたのかというメールをいただきました。ドクターとしては何か体調でも崩したのではないかというお気遣いだったのかもしれず、有難いご心配をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。
これからは国外へ出かけるときは、あらかじめお断りをした方がいいかもしれません。というのは本頁は毎日の更新を原則としておりますので、むろん時どき抜けますけれども、空白が長くなると読者の皆さんに見捨てられる恐れがあるからです。
ただし私としては見捨てられる恐れよりも、毎日書いていくことに大きな楽しみと意義を見いだしております。むかし朝日新聞の本田勝一記者が新聞記者を辞められない理由を書いていました。それは今日書いた文章が明朝多くの人に読んで貰えるからということです。週刊誌ならば1週間待っている間に気が抜けてしまい、月刊誌などは書いた本人が忘れた頃に出てくるわけで、時間がたつと執筆時の昂揚した気分が読者にも伝わらなくなり、面白く感じてもらえないという話でした。とりわけニュースのような話題は、ホットであるほど冷めやすく腐りやすいわけで、インターネットなどは新聞以上にホットな話題に適しているといえるかもしれません。
むろん一方では、永遠の真理や悠久の哲学について考えをめぐらす文章もあるわけですから、何十年もかかって1冊の本を書くということの意義を無視するものではありません。私も内心はそうありたいと願ってはいるのですが、ともかくHAI大会の話題に入ります。先ずは最新のAB139双発タービン・ヘリコプターの飛行ぶりをご覧ください。
以下の写真は去る2月8日、HAI大会の前日、ベル社の飛行研究センターに招かれ、AB139のレクチャーを受けると共に、ふだんは禁止されている同社工場内で撮影させて貰ったものである。もっとも素人の悲しさ、出来はあまり良くない。
AB139は2年前の2001年2月3日に初飛行、2002年12月16日から試作3号機がアメリカで試験飛行を開始した。目下、アリゾナ州フェニックスのハニウェル社の施設で、プリマス・エピック総合制御およびディスプレイ・システムなどアビオニクスを中心とするテスト中。ただし、この日はHAI大会のため特別にフェニックスからダラスへ飛んできたらしい。
AB139に関連する北米メーカーは、ベルやハニウェルばかりでなく、プラット・アンド・ホイットニーもある。エンジンはPT6C-67Cターボシャフト(1,679shp)が2基。また顧客の要求によっては、警察用の特殊装備、救急用の医療装備をする予定で、これにも装備メーカーが関係する。
量産はイタリアのほか、ここベル社でもおこなうことになっている。
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AB139は最新の技術水準を実現したヘリコプターで、速度、快適性、余剰馬力、機内の広さなど、他機を圧倒している。また同級競合機にくらべて、ペイロードが大きく、高速で長距離を飛べることから生産性が高く、運航費が安いのも大きな特徴である。とりわけペイロードを減らすことなく、最大全備重量でカテゴリーAの飛行ができる。
設計基準は新しいJAR29/FAR29にしたがい、最新の技術と実証ずみの技術を合わせて採用している。総重量は6,000kg。キャビンは広くて乗客15人、パイロット2人乗り。または2.5トンのペイロード搭載が可能。最大速度は309km/h。巡航速度は機体重量、気温、高度の如何にかかわらず最大出力の75%で277km/h以上を維持できる。1発停止の場合の高度限界は12,000フィート(3,650m)に達する。
主ローターは5枚ブレード。騒音はICAOの基準よりも5デシベル以上少ないという。尾部ローターは地上高2.28mの位置にあって、安全を期している。
2003年なかばにはイタリア航空局(ENAC)の型式証明を取り、続いてFAAの証明を取る予定。最近までの受注数は世界22社から80機で、量産2年分。オフショア、社用ビジネス、救急、警察などの注文である。
AB139は米沿岸警備隊(コーストガード)のディープ・ウォーター計画の候補にもなっている。深海といっても海中に潜るわけではなく、大陸棚がつきて海が深くなる辺りの沖合での警備活動をいうらしい。
ちなみに国の領海は、その国の主権が及ぶ領土に接した一定範囲の海域をいい、外国船が勝手に航行したり,漁業をしたりすることはできない。その範囲は12海里(22.2km)を主張する国が多い。その外側には経済水域が設定され、沿岸から200海里(370km)までは漁業資源や鉱物資源の管理権を沿岸国に認めることとなっている。ただし船の通行や海底パイプラインの敷設などは公海と同様に扱われる。
コーストガードのAB139は、この経済水域での警備や救難に当たることが想定されている。
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ところで、このヘリコプターはベル社とアグスタ社の共同開発という形になっていますが、実質はイタリアの設計になるものです。それが如何に素晴らしいかという説明をアメリカ人から聞きながら、私はちょっとベル社が気の毒になりました。
同社としてはこの半世紀のあいだ、アグスタ社にライセンスを与え、アメリカ製のヘリコプターをイタリアでつくらせてきたわけですから、今やその立場が逆転しかねない。恐らくは内心口惜しかろうと察せられるわけです。無論そんな表情は彼らのどこにも見えませんでしたが。
日本のヘリコプター工業も、アメリカを口惜しがらせたいものであります。
(西川渉、2003.2.15)
試験飛行場の一角に立つベル社のコントロール・タワー(表紙へ戻る)