
ファーンボロ・ショー(3)
ソニック・クルーザー ソニック・クルーザーは本気かウソっ気か。日本の3重工――富士、川崎、三菱の3社がそろって開発研究に参加しているところを見ると、まさか幻影ではあるまい。
日本以外にも、伊アレニア・エアロノーティカや米ヴォート・エアクラフトなどが参加、エンジンについてはGE、ロールスロイス、プラット・アンド・ホイットニーが研究を進めている。こうした研究がうまく進めば、その結果は航空技術を2段階飛躍させることになるという。
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しかしファーンボロ航空ショーで、ライバルのエアバス社は、あれは超巨人機A380に当たっているスポットライトを、強引に自分の方へ向けさせるための手段に過ぎないと口撃した。
場所がイギリスだから、欧州勢すなわちエアバスに味方する論調も強くて、『フィナンシャル・タイムズ』紙なども、これはボーイング社にとって大きな賭であるとし、速度はマッハ0.98とはいうが実際はマッハ0.92を超えるあたりから燃費が急増し、経済的に成り立たないのではないかという説を書いている。
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それに対するボーイング社は、ファーンボロに顔を見せた幹部にも、以前のようなあせりの色は見られなかったらしい。諦めたのではないかという人もいるが、そうではなくて、ここでじっくりと腰を落ち着け、もっと時間をかけて設計研究に力を入れようというのであろう。
機体の形状も、この1年ほどの間に変わってきており、全体の形は上図に見られるような当初の鋭いデルタ形がやや普通の飛行機のようになってきた。主翼の2重デルタもさほどはっきりしなくなったし、翼端の形状も変わった。前方のカナード翼はやや大きくなって上反角がなくなり、取りつけ位置も機首先端から後方へ動いた。またカナード翼のない形状も研究されているとか。
垂直尾翼の先端は、これまではとがっていたのが、梯形になった。高さも増えて、内側への傾斜がなくなり、真っ直ぐ立っている。コクピットもキャビンの一部だったものが、前方へ突き出してきた。
エンジンは、プラット・アンド・ホイットニー社によれば、片側で37,000kg前後の推力が必要。にもかかわらず騒音は現用エンジンよりも小さいという。
ソニック・クルーザーの今と昔
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昔といってもわずか1年前の完成予想図(左)と最近の予想図(右)
カナード翼の上反角がなくなり、垂直尾翼が高くなって内側への傾斜がなくなった。
そしてコクピットが機首先端に押し出されたなどの変化がよく分かる。![]()
しかしボーイング以外のメーカーや研究者の中には、いま旅客機に求められている要件はコストの安いことが最大の課題であるのに、なぜボーイング社がわずかな速度増にこだわるのか、疑問を呈するむきも多い。
開発日程もだんだん先延ばしになり、当初はA380の就航時期を狙って2006年には初飛行させたいとしていたが、ファーンボロでは早くて2007年、おそらくは2009年頃という声も聞かれる。
しかし、まあ、いろいろと問題はあるかもしれぬが、航空機の開発にはこれくらいの夢と希望と冒険があってもいいのではないか。現実にとらわれ過ぎて、石橋を叩いているばかりじゃ面白味がない。技術者や研究員だって、こうした壮大な課題を与えられると張り切るはず。仕事に張り合いが出てきて、そこから夢が現実になったりする。ここに集めたいくつかの完成予想図を見ているだけでも、胸ふくらむ思いがするではないか。
残念ながら、これも1年前のパリ航空ショーで貰った写真。
したがって機体の形状も古いままの特徴になっている。
今年はファーンボロへ行かなかったので、新しい写真がない。![]()
研究者たちの夢を託した風洞試験用の縮尺模型
低速風洞と高速風洞の試験がおこなわれた。![]()
高度40,000フィートへ向かって駆け上がるソニック・クルーザー
巡航性能はマッハ0.95〜0.98で、航続6,000〜10,000nm。
これだけの巡航能力ががあれば、エアラインにとっては全く新しい路線を開くことも可能。
しかも旅客にとっては移動時間が15%ほど短縮される。![]()
ところで、ボーイング社は7月22日、ファーンボロ航空ショーでソニック・クルーザーの燃料効率、排出ガス、騒音削減など環境面への対応を追求していくと発表した。
それによると「旅客は、より“速い”飛行機を望んでいますが、速さの追求が環境を犠牲にするものであってはなりません。ソニック・クルーザーの開発においては、環境面への配慮を十分に討議し、次世代の航空機の実現に向け努力しています」。ソニック・クルーザーは、乗客一人当たりの燃料消費が現用航空機と同じで、主な排ガス成分は少なく、騒音も軽減されるという。
たとえば騒音は、新しく強化された騒音規制「チャプター4」を満たす。また初期上昇性能が良いので、高速で高い巡航高度へ上昇することができる。そのため騒音影響区域(Noise Footprint)は、現用機より3割ほど小さくなる。
下図は初期上昇性能を示すもので、現用旅客機の巡航高度より6,000フィート高い高度まで6分早く到達し、40,000フィート以上の高高度を巡航する。
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燃費は、現用ボーイング機の乗客一人あたりの燃料消費量が25年前の航空機より25%減となっているが、ソニック・クルーザーは、これらのボーイング機と同等である。それというのも巡航高度が高いうえに、徐々に高度を上げてゆく「クライミング・クルーズ」により、効率的に運航することができるためだそうである。
下図は、その標準的なフライト・プロフィールで、現用機が段階的に高度を上げてゆくのに対し、ソニック・クルーザーは連続的に上昇しながら巡航するもようを示している。
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(西川 渉、2002.7.29)
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