
<スペース・シャトル>
「コロンビア」爆発 ![]()
スペース・シャトル「コロンビア」は去る2月1日テキサス上空で爆発、ついにフロリダの基地まで達し得なかった。爆発に至るまで何があったのか、カリフォルニアの海岸を越えてから6分間にどんなことが起こったのか、何故そうなったのか。
原因については目下、米大陸を西から東へ横断するように落下した多数の断片を集めて、調査がおこなわれている。すでにさまざまな説が報じられているが、確定的なことはまだ分からない。逆にああすればよかった、こうすれば生還できた筈といった説も多い。コロンビアの事故について、英『フライト・インターナショナル』誌(2003年2月25日号)は、以下のとおり、時間的な経過を秒単位で報じている。
時刻表示は、たとえば13.44.09はグリニッチ標準時の13時44分09秒をあらわす。
- 13.44.09――高度120,400m、速度マッハ24.56。
- 13.50.53(太平洋上空74,081m)――温度の上昇はじまる(速度マッハ24.12)
- 13.52.17――左主脚収納倉内壁のブレーキ・ライン・センサーに異常な温度上昇(高度72,174m、速度マッハ23.58)
- 13.53.46(サンフランシスコ上空70,166m)――ブレーキ・ライン・センサーの温度上昇率が毎分華氏1.4°から5.5°へ増加、さらに上昇がつづく(速度マッハ22.86)
- 13.54.20(ネバダ州に入る)――機体左側の抵抗が増加したため、操縦系統のエルロン・トリムがゆっくりと変化。
- 13.54.22――左翼上面胴体側の2つの温度センサーが異常に上昇。
- 13.55.21(ラスベガス上空68,275m)――空気抵抗が増加(速度マッハ21.92)
- 13.55.41――胴体左舷の温度が異常に上昇(高度67,915m、速度マッハ21.69)
- 13.56.03(アリゾナ州上空)――左翼下面の温度低下。温度センサーか翼自体の破壊と見られる(13.57.43――温度センサー破壊)
- 13.56.30〜13.56.55――操縦系統プログラム通りに作動して、左へロール。
- 13.57.19〜13.57.24(ニューメキシコ州に入る)――左主脚外側タイヤ圧が異常に上昇。
- 13.57.35(サンタフェ上空66,094m)――エレボンのロール・トリム開始(速度マッハ20.31)
- 13.58.03――エルロンのトリムが急増。
- 13.58.32〜13.58.54(テキサス州に入る)――左主脚のタイヤ圧と車輪温度のセンサー破壊。
- 13.58.39〜13.58.56――コロンビア搭載のバックアップ・コンピューターが乗員にタイヤ圧のデータがなくなったと警報。
- 13.59.30(ダラス上空61,193m)――2つの右ヨー・スラスターが、エレボンのオンコース維持を助けるために噴射(速度マッハ18.16)
- 13.59.31――エレボン作動最大限。
- 13.59.32――エルロン・トリム最大限。全信号消滅。
その後5秒間のデータが落下した残骸の中から見つかったが、それによると上記信号が消滅したのち、左舷の抵抗増大に対抗して第3および第4のヨー・スラスターが噴射したらしい。
こうした状況から、NASAは、コロンビアの異常な温度上昇が爆発7分前の太平洋上空にあったときから左主脚の部分で始まり、左翼および左舷が超高温に達したと見ている。
その結果、コロンビアに何が起こったか。以下の写真に見るとおりである。
この驚くべき写真は、アメリカから山野さん経由で送られてきたものである。イスラエルの宇宙衛星から撮影したという注釈がついている。
真に迫った光景だが、どうやら作り物らしい。広大無辺の宇宙の中で、小さなスペース・シャトルを、それもマッハ20前後の超高速で突入してくるところをタイミング良く、こんなに鮮明に捉えるのは、残念ながら不可能だろう。また、背景の地球もどのように変化してゆくのか。距離が遠くて、一瞬の爆発だから動くようには見えないのかもしれぬが、空想写真にしてはうまく作ったものである。
こうしたコロンビアの事故に関して、米『アビエーション・ウィーク』誌(2003年3月10日号)が「リスクを恐れるな」という読者からの投書を掲載している。
「1903年12月17日ライト兄弟がキティホークでリスクを冒して初の動力飛行に成功して以来、多くの人が命を賭して飛び、死んでいった。われわれが今日生きて飛んでいられるのは、彼らがリスクに命を賭けたお陰である。
2月1日のコロンビアの事故も、乗員たちは悲劇の可能性を理解していたはずであり、他の宇宙飛行士たちも同様であろう。われわれは今後も宇宙への挑戦を続けなければならない。そのことが彼らの偉大な死をたたえることになるのだ。
宇宙へ向かう勇敢な人びとに、リスクがあっても構わぬかなどと訊いて、名誉を傷つけてはならない。リスクを避けることこそ、恥なのだ。個人でも企業でも国家でも、自己満足に陥ってリスクを嫌っていればどうなるか。その結果は歴史の示すとおりである。
今ここでアメリカの為すべきは、リスクを冒し、リスクを克服して、人類に貢献することである。リスクを避けようなどと考えて、命を賭けてきた先人たちの死を無にしてはならない。それこそは彼らに恥をかかせ、われわれも恥をかくことになるだろう」
日本にも昔から「虎穴に入らずんば……」という言葉があった。一方で「沈香もたかず屁もひらず」というが、近頃はリスクを避けるばかりで、宇宙や虎穴はおろか屁もひらない国になってしまった。
(西川渉、2003.3.15)
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