
MDヘリコプター最近の話題MDヘリコプターの話題がにぎやかである。同社は、オランダ資本の下に再発足して3年が経過した。
かつて、ヒューズ・ヘリコプター社の時代にノーター実験機が初飛行したのは20年前の1981年末。初のノーター実用機MD520Nが引渡されたのは10年前、マクダネルダグラス社の傘下にあった1991年のことである。
その後、ボーイング社の傘下にあった時代を経て、現在のMDヘリコプター社となり、一時は先行き不安もささやかれたが、現状は明るい前途が見えてきた。そうした明るい光を、MDヘリコプター社に頼まれたわけではないが、最近の話題の中から探ってゆきたい。
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引渡し3分の1は救急機 MDヘリコプター社は現在、MD902エクスプローラー双発機と、小型単発機のMD500E、MD520N、MD530F、MD600Nを生産している。
これらのヘリコプターが持つ大きな特徴は、一部を除いて、尾部ローターのないノーター構造だが、最初のノーター実用機は1991年10月アリゾナ州フェニックス警察に引渡された7機のMD520Nであった。以来10年を経て、最近100機目のMDエクスプローラーが完成した。
この100号機を受領した朝日航洋は、ほかに6機のMDエクスプローラーを運航しており、うち3機を救急専用のドクターヘリとして使っている。
去る2月の国際ヘリコプター協会(HAI)年次大会では、米エアメソッド社向けのMDエクスプローラーが展示された。同時に米エアロケアから救急機として3機の受注が発表された。これらの機材は今年7〜9月に引渡され、現用BK117C1に代わって、テキサス州やニューメキシコ州の3か所の病院で救急待機に入る。
最近のMDエクスプローラーは、引渡し機の3分の1が救急用となっている。救急機としての特徴は、機内のキャビン・スペースが大きいために医療機器の設備がしやすく、医師や看護婦の治療もやりやすい。また後部には貝殻ドアがあって患者をのせたストレッチャーの出し入れも容易である。そして尾部ローターがないため、地上業務の安全性が高いといった特徴を持っている。パイロット独りのカテゴリーAによる計器飛行も可能。
(米マーシーエアの救急用MDエクスプローラー。2001年末に引渡されたばかり)![]()
オフショアや中国へも MDエクスプローラーは、海洋石油開発の支援にも使われるようになった。去る12月からエアファスト・インドネシア社がジャワ沖を舞台に、BP(ブリティッシュ・ペトロリアム社)との契約で2機の運航を開始した。週7日、1日24時間、一刻の休みもなく海上の石油プラットフォームへ向かって飛行と待機を繰り返し、すでに500時間を飛んだという。
飛行条件は1発停止の場合も安全な飛行が続けられるカテゴリーA。赤道直下の高温ではパイロット2人と乗客6人になる。機体には万一の着水時に自動的に膨らむフロートと救命いかだが装備されている。それに捜索救難のための吊り上げホイストやカーゴフックなども。
メキシコでは、MDエクスプローラーがロケット弾や機関砲を装備した攻撃機として使われることになった。この軍用型はMDコンバット・エクスプローラーと呼ばれ、1月下旬3機がメキシコ政府に引渡された。今年末までには9機になる予定。
火器装備はガトリング砲1門と70ミリ・ロケット弾7基。将来はミサイル装備も考え、新たな軍用市場の開拓へ向かうことにしている。
MDエクスプローラーはこのほど中国からも初の注文を受けた。同機は今年秋に引渡され、上海を拠点とするチャーター飛行に使われる。中国では現在、珠江地域でMD600Nが飛んでいるが、MDヘリコプター社は今後、中国市場の開拓にも力を入れる方針で、向こう5年間に100機以上の受注目標を掲げている。
(社用ビジネス機として使われているMDエクスプローラー)![]()
今年の生産目標は58機 MD社の2001年引渡し数は、前年を下回って28機にとどまった。ただしMDエクスプローラーは表1の通り、前年の16きから20機に増えている。
2001年の引渡し数が減った理由について、MDヘリコプター社は次のように説明している。一つはトルコ警察から2001年初め10機の注文を受けたが、年末までに政府の予算が認められなかった。またオランダ警察は4機のMDエクスプローラーを発注したが、警察が訴訟を受けて争っているうちに年を越してしまった。しかし2002年には引渡される予定という。
また昨年は米国各地の警察が財政難のために小型ヘリコプターの発注を手控えた。これも、しかし、同時多発テロが発生したことから一転して増機の動きを見せはじめたとか。
MDヘリコプター社の決算内容は、2001年の売上高が1億3,300万ドル(約180億円)で前年比15%増となった。年末の受注残高は58機。2002年の生産目標も58機である。
(テキサス州で救急飛行をしているエアロケアのMDエクスプローラー。
同社は合わせて3機を発注している)![]()
無駄ではない反復訓練 MDヘリコプター社の最近の調査分析によると、適正な訓練を受けているパイロットは、受けていないパイロットよりも安全という結果が出た。一見して至極当然のことだが、その当然がおこなわれていないというのが調査の結果である。
これはMDヘリコプター3,427機に関する追跡調査で、これらのヘリコプターが1997〜2001年の間に起こした事故または異常運航は157件であった。この中には事故に至らない小さな失策や不具合も含まれるが、その9割以上のパイロットが「リカレント訓練」(recurrent training)を受けていなかった。
リカレント訓練とは1年に1度、または半年に1度、メーカーその他の施設でシミュレーターや実機により緊急事態への対応操作を中心とする訓練を受けることである。これにより通常ではほとんど遭遇しない異常事態を繰り返し体験し、それが現実に生じた場合にそなえるものである。
このようなリカレント訓練は、定期航空のパイロットには義務づけられているが、ヘリコプターのようなジェネラル・アビエーションの場合は義務とはされていない。しかし、この訓練が繰り返しおこなわれていれば、MDヘリコプター機のほとんどの事故または異常運航は避けることができたのではないかというのが、MDヘリコプター社の調査結果である。
たとえば2001年に発生した事故については表2のような結果が出ている。すなわち当該機種の操縦資格を取得したのちも正規のリカレント訓練か何らかの訓練を受けていたパイロットは、事故や異常運航に至る割合が非常に少ない。この表では4%と9%を合わせて13%しかない。
また4年間に生じた157件の事故または異常運航のパイロットのうち、リカレント訓練を受けていたものは7%しかいなかった。言い換えれば、適切な訓練を受けたパイロットが事故を起こす確率はきわめて少ないということである。しかも、死傷者は1人もいなかったという結果になっている。
以上のことから、MDヘリコプター社は顧客に対し、パイロットや整備士が新しい機種に移行する場合はメーカーの承認した正規の拡張訓練を受け、その後も定期的にリカレント訓練を受けるよう勧告している。「リカレント訓練は決して無駄ではない」というのがMDヘリコプター社の結論である。
(千葉北総病院ヘリポートに着陸するMD902ドクターヘリ)(西川 渉、2002.5.22)
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