[PR]看護師の好条件な求人情報満載:年間50000人の看護師が転職に利用!


民間向けティルトローター機

どっこい、BA609は生きている

 BA609の開発が中止になるかもしれないというニュースを書いたところ、身辺にわかに忙しくなった。元川崎重工業の義若基(もとい)氏からは、あれはもともと駄目だったのだという忠告があったり、ベル社からはまだ止めたわけではないというマーフィ会長のメッセージが送られてきたりしたのである。

 義若さんの忠告は「チルト・ロータはヘリコプタと固定翼の長所を共有しているのでは無くて欠点を併有しているのです。ヘリコプタとしては垂直離陸重量に対してロータ径が小さすぎる。……また固定翼とするならば、逆にロータ径が大きすぎる。プロペラとしては地面と干渉して着陸できない」。したがって「もっと冷静に」なれというのである。

 航空機メーカーのベテラン技術者は、たいていの方がティルトローターのような初物もしくはゲテモノはお嫌いである。エアライン関係者も、そんなものには乗りたくないし、飛ばしてもお客さんが乗ってくれないとおっしゃる。

 もとより未だモノになったわけではないから、その通りの結果に終わるかもしれぬ。けれども現状に甘んじていては航空界の先行き楽しみがない。もともとヘリコプターという少数派の世界に生きてきたものとしては、もっと少数派のティルトローターにも贔屓をしたくなるのは当然のこと。そういうところから、もうひとつ別の新しい世界が開けるのではないかという期待や希望も生まれるのではないかと思うのである。

 航空というものは、冷静な科学技術のたまものであると同時に、一方では冒険の世界でもある。企業の立場からすればベンチャービジネスの性格も強い。

 その冒険を避けてきたのが戦後日本の航空工業で、防衛庁や通産省の資金的、営業的裏付けがなければ、新しい仕事に取りかかろうとしなかった。その結果が世界の航空工業界における今の日本の手痛落にほかならない。

 ……などと書けば、またしても義若さんに噛みつかれるだろうけれど、ティルトローターが弱くて、いじめられているからこそ、つい判官贔屓をしたくなるのである。義若さんには是非とも、こうした心情をご理解いただきたいと思う。

 その判官――ベル社のジョン・マーフィ会長が、BA609の開発中止という報道に関して、3月18日付けで発表した声明の要旨は次の通りである。

 BA609計画に関して率直に申し述べたい。先ず第1に、この計画は中止になったわけではない。

 BA609の開発が1996年に始まったとき、そのスケジュールはV-22の開発計画の後を追う形で進める予定であった。当時のマネジメント・チームは、V-22がティルトローター技術を実用化するものと信じていたし、私自身も今日なお同じ信念を持っている。

 当時想定されたことは、今頃はV-22が完成し、本格的な量産がはじまっているはずだった。しかし実際は、事故のために試験飛行をやり直すことになり、量産は数年間遅れることになった。

 V-22は1年以上飛んでいない。今後2か月くらいのうちに、海軍の試験施設で飛びはじめるであろう。この新しいテスト・プログラムは2004年まで続けられ、2005年には量産が認められることとなろう。当分は年間およそ12機の生産になるものと思われる。

 そこで重要なことは、BA609がV-22の開発を追い越して先へ進むわけにはいかないということである。やはりV-22の一連のテストが完了したうえで、民間機も先へ進むことができるのである。

 私は、まずV-22がティルトローターの技術開発に関する先鞭をつけ、しかるのちにBA609の型式証明取得に関する試験をはじめるのが穏当だと思う。したがってBA609の開発作業を遅らせたのは、私自身の決断である。親会社テキストロンからの指示ではない。この決断は、我が社の利益に適うものであり、ティルトローター民間機として将来の成功にもつながるものと確信している。

 私はティルトローター技術に自信をもっている。その速度、航続距離、ペイロードは海兵隊や特殊部隊のみならず、民間市場でも有用であると考える。

 われわれは現在、本年末までにBA609を飛ばす計画である。そのため開発スケジュールの変更が必要であり、そのことを今アグスタ社と協議中である。

 この声明に対して、英『ヘリコプター・ワールド』誌は、ベルの親会社テキストロン社のラス・メイヤー社長がBA609の大きさ、複雑さ、そしてコストから見て、開発計画に反対していると書いている。このように欧州勢がアメリカに反発する場面は、しばしば見られることでもある。

 そこで、これより先の同誌3月号は、BA609のエンジンPT-6について、原型1号機用の3基をベル社へ納めたが、2号機の分は引渡し時期が未定というHAI大会(今年2月)でのプラット・アンド・ホイットニー社の発言を引用して、2号機を飛ばすつもりはないのではないかという疑問を投げかけている。

 ティルトローターの開発をめぐっては、風雲急を告げてきた。いずれが正しいかは、時間が明らかにするであろう。


(2001年夏のパリ航空ショーに展示されたBA609の実物大モックアップ)

 

【関連サイト】
 <HAIレポート>本当に夢幻だったのか2002.3.22)
 
<緊急レポート>BA609ティルトローター開発中止か2002.3.18)

(西川渉、2002.3.25)

表紙へ戻る


[PR]500000円と車プレゼント:今なら無料で現金と新車が当たる大抽選!